高慢と変態

時速約0.0004本のスピードで執筆しています。

「脳みそ」って疲れないらしい…!めっちゃ面白い本見つけた。

今日は「海馬」という本を読みました。

コピーライター糸井重里×海馬研究者の池谷裕二の対談本。

海馬/脳は疲れない ほぼ日ブックス

 

紀伊國屋書店で買いました。別に平積みになってるわけでも、「○○な100冊」みたいなキャンペーンで目立つように置かれているわけでもなく、ただ無個性な1冊、といった感じでその他大勢と共に背表紙だけが見える形で陳列されていたわけです。

そんな目立たない場所から購入にまで至ったのは、まあ当然おもしろそうだな、と思ったからなんですが、なんでおもしろそうと思ったかといえば、「コピーライター×脳科学者」ってところです。人の感性を知り尽くして、しかもそれを言葉に置き換えるプロである糸井さん。そして、池谷さんは科学に精通することによって理論的・体系的に脳の秘密を説明することが出来ます。面白い本の1タイプとして、「具体と抽象が非常に豊かであること」というのが個人的にはある気がしていて、その観点から言えば「具体のプロ」である糸井さんと、「抽象のプロ」である池谷さんの協同作業がつまらない訳がないわけです。しかもテーマが「脳」ってわくわくするし(笑)

 

実際、当たりでした。紀伊国屋書店が入っているのと同じショッピングセンターの中にあるカフェでちょっと読み始めたら、約350ページ、完読しちゃいました(長く居座ってしまってすいませんでした…)。

しかもその面白さというのも、構造的には僕が予想した通り、「具体と抽象が素晴らしい」というところにあると感じました。読者の視点に立って糸井さんが脳にまつわる素朴な疑問をぶつけると、池谷さんは理論的に、しかし理解出来るかたちで説明を返す、と言ったように。若しくは池谷さんが脳に対する学術的知見を紹介すると、糸井さんが普段の生活のシーンに当てはめて解釈を進めて行ったり。

 

例えば、表題にもあるとおり「脳は疲れない」らしいんです(!)。考えすぎて疲れたなーと感じていたとしても、それは目や身体が疲れているだけであって脳自体が疲れているわけでは無いんだとか…これはやはり池谷さんから紹介された驚きの科学的事実なわけですが、これを糸井さんは「仕事」と結びつけて考えていきます。「やっぱり考え続けることで必ず答えは見つかる」とか、「休憩中に本当に別のことを考えてしまうのではなく、休憩中もそれまで取り掛かっていた話題について考えることが大事だと思います」など、自身の経験と照らし合わせていきます。しかも「糸井さんめっちゃ教養あるなー」と驚いたんですけど、自身の経験だけじゃなくて、例えばキリスト教だったり孔子だったり小説家の言葉だったりを引用してきちゃうわけです。固い科学的な説明を、はるか遠くに位置するかのように思えた概念とか逸話と結びつけるその力は凄まじいものがありますし、読んでいてとても迫力がある。

 

で、いろいろ幅広く脳について語っているんですが、その中で個人的に面白いなと思ったのは、「新しい刺激を増やすと脳は活性化する」というものです。表題にある「海馬」というのは池谷さんいわく「記憶の製造工場」なんだそうで、海馬を通じて記憶が作られるんだとか。で、脳って使えば使うほど機能が上がる(?)らしく、海馬に対して刺激を大量に与え続けると、工場としての製造力がアップするんだとか。あ、専門家の方がいたら補足とか欲しいです。専門的には語弊があると思うので。

この話を聴いて思い出したんですが、うつ病の人ってどうやら同じことを繰り返し考えてしまうみたいなんですよ。同じことしか考えないってことは、まあ刺激的とは言えないじゃないですか。うつ病の症状として思考力の低下というのが存在するのは、もしかすると海馬の処理能力が低下していることも関係しているのかもしれないなと思いました。

あと、記憶を作るのは海馬なんですが、頭に入ってきた情報すべてを記憶として保存するわけではなくて(上で紹介した表紙画像に書かれている文字の中で、黄色でプリントされているのは何だったか覚えてますか?)、その中から選別して保存しています。その選別に際して重要になって来るのが「扁桃体」というもので、感情・好き嫌いにかかわる部分だそうです。楽しいな、好きだな、というものは記憶に残りやすく、つまんない、嫌いと感じるものは覚えておきづらいということです。

うつ病扁桃体との関係が強そうな気がしませんか?うつになるきっかけも色々あると思うんですけど、例えば仕事のこととか家庭のこととか、日常生活の大きな部分で長期間に渡る強いストレスを浴び続けるとなりやすいと思うんですけど、そういうのって考えるしかないじゃないですか、辛くても。でも扁桃体的には「嫌い」だから、海馬の処理能力は落ちる。生活の大半を占めいているということは、逆に言えばそれ以外のことを考える時間も減る。つまり全体として「海馬」が記憶として処理する情報量も減ってしまう→うつ病の症状が出る、みたいな。でも脳ってややこしいし、人によって置かれた状況も違うからなんとも言えませんけど、僕の仮説はこんな感じです。意見や情報提供とかいただけるとうれしいです。

 

それでは。