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【感想】太陽の塔/森見登美彦

1.作者紹介

京都大学卒業の人気作家、森見登美彦さんのデビュー作である「太陽の塔」を紹介します。  

彼の小説の大半は京都を舞台に、京都大学の学生を主人公とするものです。
5年前に初めて読みそれ以来、僕は彼の小説の魅力にすっかり惚れ込んでしまいました。
京都旅行中に読み返して、改めていい小説だなあと感心せずにはいられませんでした。
最初は非常に綺麗な文語調だなあと、もしかして堅めな内容なのかなあと、ふむふむしながら読んでるわけですが、段々騙されてる感じがしてくる。何かおかしい。また少し歩を進めたところで、なんじゃこりゃああ!と気づいてしまったのです。詭弁と無茶苦茶な言動などのユーモアが文章の中で踊り狂っていることに。すまし顔で訳のわからない踊りを延々と続けているような彼の文章表現!
今でも最高に楽しませてもらっている作家さんの一人です。

 

2.感想

前置きが長くなってしまいましたが、以下読書感想文です。

主人公は休学中の大学5回生で、仲間とともに、青春を謳歌しているような輩や、精神活動の妨げとなる社会活動を排し、日々不毛な思索や論議に明け暮れていたのです。そんな彼らにとって、一年で最大の敵は、クリスマス・イヴに他なりません。主人公たちは、イヴの日に京都の市街地を混乱に陥れるための作戦を決行します。
また、主人公には彼女がいました。別れてしまいましたが、そのころの「普通の幸せ」というものを、普段の活動では否定しながら、しかし折に触れて、懐かしむというか、求めているわけです。
イヴの作戦中に、元彼女を見つけます。主人公は市街地の人混みをかき分けて彼女の跡を必死に追いかけます。その時に天高く言うのです。「良いわけがあるか!」と。そして、彼女に追いつき、ハッピーエンド、というようなお話です。


青春なんか、リア充なんか、そんなもんいらんわい!
そう言いながらも、どこかで羨んでいる自分。

彼女に振られ、恋愛に傷つき(男の方が概してめそめそ引きずるものです)、臆病になる。青春が渦巻く世界でやっていける訳がない。そうして若さ煌めく世界からリタイヤするわけです。そのような人間が自己を正当化するには、主人公自慢の、理性という「城」に閉じこもるしかない。思索に耽るには、男女交際などもってのほかである、と。
でも心のどこかで、付き合っていたときの温かさを懐かしんだり愛しんだりしているんです。その感情は理性の城壁をガンガン叩き割ろうとしている。その勢いはクリスマス・イヴの日に頂点に達し、とうとう理性の城は崩壊します。理性に閉じこもって、感性の世界をシャットダウンして逃げて逃げて逃げて逃げて「良いわけがあるか!」となるわけです。そして、また男はあの頃の普通の幸せを掴みに世界へ戻っていく。それを夕焼けどきのような美しさで森見さんは書いていると思うのです。

 

太陽の塔 (新潮文庫)

太陽の塔 (新潮文庫)

 

 それでは!!