【感想】幻のノーベル文学賞受賞者、阿部公房の「砂の女」
今日は阿部公房(あべ・こうぼう)の「砂の女」を紹介します。
去年読んだ作品なのですが、色々と考えさせられたお気に入りなので、改めてブログで考えてみたいと思います(・∀・)
幻のノーベル文学賞受賞者!?
まずは作者阿部公房について簡単に紹介しましょう。
といっても、僕もあまり知らないので(笑)、Wikipediaを参考にしながら簡単に書いておくことにします。
彼は1924年に生まれ、1993年に急性心不全のため亡くなっています。
作家だけでなく、劇作家、演出家、はたまた発明家の顔も持っていたようです。
作家としては、芥川賞、大江健三郎賞、読売文学賞など、名だたる賞を総なめにしている感があります。すごい作家だったのですね。
その評価は国内に留まらず、劇作家としてのキャリアを含め、海外でも非常に高く評価されていました。
Q.「非常に高く」ってどれくらいよ?
A.「ノーベル文学賞」を獲るレベルくらいです。
ここでwikipediaの「阿部公房」のページからの引用を。
大江健三郎は、安部公房をカフカやフォークナーと並ぶ世界最大の作家と位置づけている。自身がノーベル文学賞を受賞したおりには、大岡昇平、井伏鱒二の名前と共に安部公房の名前をあげ、もっと長生きしていれば、自分ではなくて彼らがノーベル文学賞を受賞したであろうという事を述べている。実際に、ノーベル文学賞を選考するスウェーデン・アカデミーのノーベル委員会のペール・ベストベリー委員長は、2012年3月21日、読売新聞の取材に応えて、「(安部公房は)急死しなければ、ノーベル文学賞を受けていたでしょう。非常に、非常に近かった」と語っている[2]。
先ほど阿部公房が「急性心不全で亡くなった」と書きましたが、アンダーラインの理由はここにあったのです。
阿部公房は今の一般読者の方々にはあまり手に取られなくなっていますが、内容的にはノーベル文学賞レベルであって、誰もが読んでもおかしくない作品なのです!
村上春樹を読むなら阿部公房も読んでほしい、というのはさすがに無理なお願いでしょうか(笑)
なんかカミュの「不条理」を思い出す・・・
ざっとどんな物語か言いますと、
砂を毎日長時間家の周りから運び出さなければ家が埋もれてしまうような場所に固執する集落の女と、その集落に閉じ込められた男の話。
って感じです。
なんでわざわざ砂を毎日毎日、長い時間頑張って運ばにゃならんところで生活するんでしょう?
えっこらえっこら働いてやっと砂がなくなる。
だけど次の日にはまた、たっぷり砂が辺りに積もってる。
延々と繰り返すわけです。来る日も来る日も。
北国でも冬は毎日屋根の雪かきをしないと家が潰れる、なんてことが実際あるようですが、これはその比ではないでしょう。
なにせ、365日、なのですから。
・・・なんだか、これを思い出すんですよねえ。。
シーシュポスの神話/カミュ
この本にはシーシュポスというギリシャ神話中の人物が出てきます。
そのシーシュポスは、ある罰で、岩を山頂まで運ばなければならないのです。
ただ、山頂がものすごく尖っているんだか知りませんが、とりあえず岩が山頂に達するところに差し掛かると、岩の重みでまたふもとまで転がり落ちてしまうのです。
そしてシーシュポスは転がり落ちた岩をまた山頂へ・・・ということを繰り返す、という逸話でですね、カミュはこれを「不条理」の例として挙げているわけです。
どうでしょう。「砂の女」と何だか似てる気がしてきませんか?
どちらも「不毛な行いを果てしなく繰り返す」というテーマがあるような。
でもやっぱり違うよね!
似てるんですけど、「似てる!」って言ってしまうと何だか違和感が残る。
まさに「違和」感で、頭の中の私に「違えよ!」って言われているような(笑)
その直観を頼りにもう少し、うーん、と唸りながら考えました。
ああ!
とりあえず明らかに違うのは
「砂の女」は「生きるための繰り返し」であって、
「シーシュポスの神話」はそうではない
ということじゃないですか!
まあ別に説明するまでも無いんですが、
「砂の女」では、砂を運び出さないと家が潰れる=死ぬから繰り返しているのでしたね。
そして「シーシュポスの神話」では、それが罰だから、やらざるを得ないから、それをしているのでしたね(神話的な場面であり、恐らくは他の選択肢が完全に許されていない、絶対強制的なものだと思います)。
そしてこれはもはや読んでないとわからないのですが、
「砂の女」が
「どう生きたって結局は、生きるために生きる、繰り返しじゃないですか」
と言っているのに対して、
「シーシュポスの神話」は
「どう生きたって結局は繰り返しの人生って、生きる意味があるんでしょうか?」
と言っているような気がします。
難しいお話になってきた・・・(笑)
頭がショートする前に逃げます!それではまたー!